み熊野の~熊野作品集~
何度、震えたことだろう。
熊野の山中、ひとり荘厳な自然と向き合う時、ただならぬ気配に強い畏怖を感じた。
岩や滝・巨木など熊野には社殿すらない自然信仰そのままの形の場所がそこかしこに存在し続けている。
私はこうした自然信仰の痕跡を「祈りの原風景」と捉え、写真に収めてきた。
古代の人々が何を願い祈りを捧げたのか、あるいは平安時代の貴族や武士がどんな思いで遠い熊野の地へ詣でたのか、
そんなことを思いながら熊野の各地を旅し続けた。
「み熊野の」とは万葉の和歌、その書き出し冒頭部分である。
私の作品から「み熊野の」に続く上の句下の句を感じて下さったら幸いである。
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【プラチナプリントの奉納】
「残す」「伝える」は写真の重要な使命であり、
写真家にとっては浪漫でもあります。
今、私の眼前に存在するこの山や木や川が未来永劫変わらぬとは思えません。
それは例え聖地「熊野」であっても同じでありましょう
古（いにしえ）の時を想い、今を記録した写真を
一千年先まで残したいという願いは日に日に強くなっていきました。
感光材料としてのプラチナは大層高価だが一千年くらいではびくともしない性質を持ちます。
紙も保存性を鑑みて、特別に漉いていただいた現地龍神の和紙に決めました。
精魂込めて、持ちうる技術を全て使い、プリントを制作いたしました。
2018年11月、熊野本宮大社•御創建2050年の記念の年に
念願かない、一千年の時に耐える「プラチナプリント」を12点ご奉納させていただくことができました。
千年後、生まれ変わって作品を見に行くこと、それが次の目標です。
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