100歳にしてなお現役

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秋の気配後濃くなったある日の夜、パーティーからの帰り道。
山手通りを駅に向かって歩いていた。
 
夜ふけのわりに車は多く、ヘッドライトの灯りで道々は明るく照らされている。
空気は澄んで、時折吹く風はひんやりと肌を刺激する。
高級なワインの味わいと香りに酔いながら
夜空を眺め大きく息を吐いた。

「何かが変わるかもしれないな」
私は心の中でそうつぶやいた。
いい歳をして、少し変なのだが
決意を新たにしたのであった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

笹本恒子さん。
100歳になられた。
現役のフォトグラファーである。
 
先日100歳の誕生日イベントにご招待いただいた。
笹本さんを尊敬敬愛しサポートをする方々が発起人となって
ひらかれた特別な宴。
お客様もまた華やか。
人々から如何に慕われてきたかがよく伝わる。

途中、笹本先生ゆかりの品がもらえるじゃんけんゲームが催された。
先生とじゃんけん勝負で勝った人が受け取る。
シンプルながら大盛りあがりの楽しい企画、
歓声がこだまし、うれしそうな笑顔がそこかしこに生まれる。
私も商品の高級ワインをゲットすべく、目を輝かせて力一杯じゃんけんの手を掲げた。
全て1回戦敗退であった。。。

最後のメインプレゼントは、先生手作りのアクセサリーであった。
これは女性陣のどなたかにあたるべきだなと、私は会場の後ろで小さくじゃんけんの手をあげた。
これまですべてチョキを出して負けているからという理由でチョキを。
左手には懐かしのお菓子フィンガーチョコを持って、口をもぐもぐさせながら。

ところがところが、場違いな事に、じゃんけんで勝ったのは私であった。
いけない、勝ってしまった。。。
 
おろおろしながらもガッツポーズをする私に
司会の方の声がかぶさった。
「森谷さんんは、今この場所で3週間に渡る展示をされています。
しかしこの特別な夜のために、全て作品を撤去して、場所を提供してくれました。」
当たるべき理由がそこにあったのかどうかは不明であるが、
品物以上の大きな何かを授かったように思えてならなかった。
 
マイクを手渡された私は
「私は先生の半分くらいしか生きていないカメラマンです。
このアクセサリーを手に、私もかならずや先生のように100歳現役に!」
そんなような宣言をしていた。
口が勝手に動いた、まあ、毒にも薬にもならない話ではある。
 
しかし
 
「100歳にしてなお現役」
 
あれ?と思う。
自分で発した言葉が後からじんわり迫ってくる。

私の年齢は、フリーランスのカメラマンにとって仕事が激減する年代だ。
実力があろうがなかろうが、そういう傾向にある事は事実なのだ。
だからという訳ではないけれど、知らず知らずに妙な試行錯誤を始めたり
いろいろ動く事が多くなった。
その事が思い起こされた時に、はっと我に返った。

100歳以上生きた上で、現役なのだ。
趣味ではない。プロとして現役。

その道のりを考えるとき、今の流行とか、求められている事だからとか
安易に流されて行く事への疑問を感じる。
例え世の中の人が全部違う方を向いていたとしても、
自分が信じるものに愚直に取り組み続ける事だけが
全てなのではないかと思えてくる。

それは「軸」と言い換えてもいいだろう。

1本の筋、大きく太い軸。
先生には風雪に耐えうる太い大きな「軸」がある。
 
だからこその好奇心、だからこそのバイタリティー。

お前の軸はなんなんだい?自分に問うてみる。
 
まだまだ道は長いぜ。
まだまだ。

 

 

 

 

 

 

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