先祖が眠る土地 小さな旅02 (その1)

MO010843

鰐口の音がボワーンと響く。
僕は背筋を伸ばし、静かに合掌をした。
心の中で自己紹介と自分の祖先が暮らした村を訪ねにきた旨をつぶやく。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
思い立って、ある朝、車で東京を出た。
なぜその日だったのかなんて分からない。
ただ、朝、今日行こうと思っただけ。
 
生まれてからそろそろ半世紀を迎えようとするのに
僕はこれまで自分の先祖の事を何一つ知らなかった。
祖父母は僕が生まれる前に他界しており、核家族化された社会の中に生きた事もあって
誰も多くを語る事はしなかった。
父は恵比寿で生まれ、母は神楽坂で生まれた。
知っているのはそれだけだ。

先祖は、どこで暮らして、どんな職に就いて、家族はどうだったのか、
その土地に来る前はどこにいたのか。
ずっと知りたいと思った。
 
戸籍の除籍謄本を追えば、多少の事は分かるはず。
数日前、僕は区役所で謄本を手に入れた。
あまり縁のない土地名が記されている。
知らない土地であった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・
 
高速道路を1時間半ほど走り、さらに国道を北上する。
県境でもある大きな川を越え、いよいよ目指す村(住所表示は町)区域に入った。
工業団地風の土地を抜けると、緑の大地に太陽がまぶしく輝く牧歌的な里があらわれた。
畑があって、水路があって、家があって、古い神社があって。
小鳥がさえずり、桜の花が舞っていた。
 
ここなんだなぁ。ここで暮らしていたんだ。

いてもたってもいられない。
早く謄本に書かれた住所に行きたい。
僕は、ちゃんと地図を見ようと、車を止めた。
 
道路右手に、石の観音像、その後ろに鐘が見えた。
お寺さんだ。
ちょっと拝んでおくか。
  
僕は、凝った方と腰をのばそうと車を降りたついでに
お寺さんをのぞいてみた。
今から思えば、
「吸い込まれて行った」という方が正しいだろう。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
冒頭に記したように拝んだ後、道ばたに止めた車も気になるし
そそくさと戻ろうとしていると、
寺の中から優しそうなご婦人の手招きが目に入った。

「どうぞ、中でお釈迦様にご挨拶でも」とのこと。
4月8日の花祭り(釈迦誕生の祝い)、その前後を祝いの期間としているらしかった。
本堂の中では、数人のご婦人達が祝うお茶会をされている。
 
僕は、自分が森谷という性で、この地で先祖が暮らしていて
今もきっと血を家を引き継いだ森谷さんが暮らしているはずと、話した。
「ああ、森谷さんいるよ、どっちだろうね、本家かね」
「今のあるじは若いからー」云々。。。話に花が咲き始める。
 
「お墓は?」と中のお一人が聞く。
お寺の奥様が「うーん、うちじゃないな。本家は◯◯寺さんだねぇ、裏はうちだ。」
裏とは分家。
すると、ひょっとしたら、この二つのお寺に、
祖先の痕跡が???
 
「あっ、ちょっと車を道に止めてきちゃったので、お寺の駐車場に移動してきます。。。
皆さんもう少しお時間大丈夫ですか??」
このお話はどうしても伺いたい。
僕は本堂を出てて、靴を履いた。
 
その時。
 
目が合ってしまった。。。
 
右手側の墓地スペース。
「森谷家」と書かれた墓石。

ばっちり目が合ってしまったのだ。。。
 
・・・・・・・・・・・・・・・
 
(その2)に続く

 

 

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